なぜパナマ文書があそこまで注目されたのか?BEPSプロジェクトとの関係(新聞報道を解説)
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なぜパナマ文書があそこまで報道され、特にヨーロッパ中心に税務情報開示の透明化が一層騒がれたのかというと、その一因に、”BEPSルール”というものを取り決めようとする世界的な動きの中で、タイミング良くパナマ文書が出てきてしまったことにあります。
ここ10年位でしょうか、電子商取引が広く一般化して取引が国境を超えるようになりました。また企業のグローバル化が加速されるようになりました。各国の税制は企業のここまでのグローバル化や、取引の電子化を想定していなかったため、各法人が、現状の税制がそもそも想定していないような取引を考え出し、利益を低税率国に移転するようになりました。
極端な例ですが、米国企業スターバックスの場合は、英国に進出して以来14年間で約3840億円の売上を計上していますが、支払った法人税は約11億円。しかも、2008年以降は全く英国の法人税を支払っていません。その手法は、知的財産権や商標権の使用料をオランダの本社に支払ったり、スイスからコーヒー豆を仕入れたりと、法人税が高い英国での利益をさまざまな方法で、法人税の低い国に移しました。これ自体は違法ではないのですが、多国籍企業と、中小企業との間に税負担の不公平が生じ批判されますよね。。
という訳で、2012年あたりから、経済協力開発機構(OECD)と20カ国・地域(G20)が、多国籍企業の国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した租税回避「税源浸食と利益移転=BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)」への対応策を検討するプロジェクトを立ち上げました。これをBEPSプロジェクトと呼んでます。
BEPSプロジェクトでは、2015年10月、15項目の行動計画を盛り込んだ最終報告書が公表され、多くの国・地域が参加して税制のグローバルな調和を目指すこととなり、この取り組みが「百年に一度の画期的刷新」ともいわれ規模で動くようになりました。
こんな中で、パナマ文書なんかが公表され、ちょうど低税率国への所得移転を問題視していたBEPSプロジェクトを中心に、メディアが取り上げることとなった訳です。
以下2016/10/31 2:02 日経電子版
企業や富裕層の税逃れを巡っては、租税回避地の利用実態を示した「パナマ文書」が4月に明らかになり、国境を越える資金の流れの透明化を求める声が強まった。欧州では企業に情報開示を求める動きが加速しており、BEPSプロジェクトの水準を超える制度が定着する可能性もある。
欧州委員会はパナマ文書問題発覚後、欧州連合(EU)域内で活動する多国籍企業に国別利益や納税額などの報告や公開義務を定めるEU指令案を提案した。指令案は決定間近とみられ、EU諸国は今後、指令案に沿った国内法制の整備を進めることになる。また英国は、一定規模以上の事業を行う企業に、税務戦略のネット上での公開を義務付ける制度を導入予定だ。
BEPSプロジェクトが企業に求めるのは、基本的には各国税務当局への情報開示だ。欧州で進む公開ルールに企業は戸惑いもみせるが、大手商社の税務担当者は「欧州発の納税情報の透明化の流れは止まらないと覚悟している」と話す。
欧州委は米アップルに対するアイルランドの税優遇を違法とするなど税制への関与を強めている。今月26日には加盟国の法人課税ルールの共通化も提案、EUで事業展開する日本企業にも影響する。欧米には「タックス・ジャスティス・ネットワーク」(英国)など税に関する情報を発信する有力な市民団体もあり、企業の納税姿勢に注がれる目は厳しさを増している。
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